関西で新しい街歩きの楽しみ方を提案します

寺院について(伽藍)  静粛な雰囲気の境内に立つ古風な建物群

今回は、寺院編の最終回。寺院の伽藍(がらん)についてご説明しましょう。

伽藍とは、寺院の境内にある主要な建物群のこと。

山門をくぐった先の、厳かな雰囲気の境内には、年代を感じさせる重厚なお堂や、均整のとれた姿が美しい仏塔など、いろいろな種類の建物が建っています。


寺院拝観の楽しみの1つとして、静粛な境内の中を、古風で趣のある建物を眺めながら散策することが挙げられます。

その際に、それぞれの建物の意味や目的などを多少でも知っているかそうでないかで、境内散策時の「目のつけどころ」が異なり、楽しみ方も変わってきます。

では、一般的な寺院の伽藍を構成する以下の建物について、順にご説明していきましょう。

(1)
(2)本堂(仏殿)
(3)仏塔
(4)講堂(法堂)
(5)鐘楼
(6)方丈・庫裡
(7)御影堂・開山堂

お寺にはさまざまな門が存在します。その中でも代表的なものをご紹介しましょう。

當麻寺東大門

<大門・山門・三門>

寺院の正面にあるは、一般に、大門、あるいは、山門と呼ばれます。

門が向いている方角で呼ばれることもあります。

多くの寺院の正門は南に向いていることが多いため、「南大門」が圧倒的に多いのですが(東大寺南大門など)、例えば奈良の當麻寺の正門は東を向いた「東大門」です。

また、大門の左右に、一対の金剛力士像(仁王像)が置かれている場合は、仁王門とも呼ばれます。


二階建ての巨大な門は、三門と呼ばれることもあります。

三門は、臨済宗や曹洞宗といった禅宗の大寺院に多く、南禅寺や東福寺などの三門が有名です。

ただし、浄土宗の知恩院三門、浄土真宗の東本願寺御影堂門など、禅宗以外でも三門形式の巨大門があるお寺は存在します。

堂々とした造りの三門は、その寺院のシンボル的存在。

南禅寺など一部のお寺では、三門上層への拝観が可能です。


東福寺三門
仁和寺勅使門

<勅使門>

特に、格式の高い寺院では、山門のすぐ横などに、いつも閉じられた門が設置されていることがあります。

この門は勅使門(ちょくしもん)。

天皇などの朝廷からの使者(勅使)が訪れたときにだけ開けられる門であることから、このように呼ばれます。

本堂(仏殿)

法華寺本堂

本堂は、寺院の中で中心的な役割を果たす、最も重要な建物。

多くの寺院において、本堂とは、その寺院のご本尊となる仏像を安置するお堂のこと。お寺の参拝に訪れる方にとっての一番の目的地です。

奈良仏教のお寺では金堂禅宗寺院では仏殿と呼ばれることが多いです。

また、浄土系宗派では、ご本尊は一般に阿弥陀如来であることから、このご本尊を安置するお堂は阿弥陀堂と呼ばれることもあります。

一部の寺院では、本堂内の一般拝観が行われています。

また、普段は本堂内は公開していなくても、期間を限定した「特別拝観」を行っている寺院もあります。

仏塔

東寺五重塔

仏塔とは、本来、お釈迦さまの遺骨や遺灰(仏舎利(ぶっしゃり))を納める建物。

ただ、実際には、お釈迦さまの遺骨など、そう手に入るものではありません。

そこで、多くの塔では、仏舎利の代替品として、仏教の教典や宝物などが収められています。


日本の寺院における仏塔として、最も有名なのは五重塔

特に関西には、法隆寺興福寺東寺など、国宝にも指定されている貴重な五重塔がいくつもあります。

どの塔も、すらりと延びた塔身と5つの屋根の広がりのバランスが美しく、思わず見とれてしまいます。

なお、現存する木造の五重塔の中で、建築時期が最も古いのは法隆寺の五重塔。また、塔高が最も高いのは東寺の五重塔です。




仏塔は五重塔には限られません。古くは、奈良の東大寺や京都の相国寺に「七重塔」が存在したとも伝えられています。

五重塔以外の仏塔の代表例は、三重塔(例えば法起寺)や多宝塔(例えば石山寺)です。

三重塔は文字通り屋根が三重の塔で、全体的な形状は五重塔とそれほど変わりません。

一方、多宝塔は、主に、密教を基盤とする真言宗のお寺に存在する二重の塔。

ただし、二重塔といっても、五重塔や三重塔とはかなり形が異なります。

五重塔などでは各層の形がほぼ同じですが、多宝塔は1階が「方形」で、2階は「円形」です。


五重塔など仏塔の内部には仏像が収められていることが多いですが、内部の拝観が可能な塔は本堂と比べると少ないです。

内部拝観可能な仏塔としては、法隆寺五重塔(常時拝観可能)、東寺五重塔(期間限定で拝観)などがあります。

石山寺多宝塔

講堂(法堂)

講堂は、お坊さんが仏教の講義を行うためのお堂。なお、禅宗寺院では、「法堂(はっとう)」と呼ばれます。

講堂(法堂)寺院の中で、本堂に次いで重要な建物です。

また、多くの人に講義を行うことができるよう、かなり大きな造りとなっています。

なお、本堂(仏殿)と講堂(法堂)は、共に重要なお堂ではありますが、実際には、全てのお寺に両方のお堂があるわけではありません。

一度焼失して再建されなかったなどの理由で、本堂と講堂の一方しかないお寺も多いのです。

そのような寺院では、1つのお堂が、本堂と講堂の2つの役割を兼ねていることがあります。

相国寺法堂

鐘楼

東大寺鐘楼

鐘楼は、梵鐘(ぼんしょう:釣り鐘)がつり下げられた建物。

一定の時間おきに梵鐘をつき、お寺やその周辺に時刻を知らせるための施設です。

鐘楼は、境内のあまり目立たない位置にあることも多いですが、意外にも(?)古い建物が残っていたりします。

また、鐘楼につり下げられている梵鐘は金属製(主に青銅製)で焼失しにくく、奈良時代や平安時代など、古い年代に作られた貴重な鐘が今でも多く残っています。

なお、年末年始の除夜の鐘では、多くの寺院の鐘楼で鐘が108回撞かれます。

「108回」の理由は、人間の煩悩の数が108であり、鐘をついて煩悩を全て取り除くため、というのが一般的です。

方丈・庫裡

龍安寺方丈庭園(石庭)

方丈(ほうじょう)と庫裡(くり)は、共に、禅宗寺院で一般によく見られる建物。

お寺の住職の居住場所、または、お坊さんが食事をする場所です。


また、多くの禅宗寺院では、方丈の前に見事な庭園が備えられています。

例えば、龍安寺の方丈には、枯山水庭園の代名詞「石庭」があります。

白砂の上に15個の石が置かれた不思議な空間は、日本人だけでなく、外国からの観光客にも人気のスポットです。


御影堂・開山堂

御影堂の「御影」とは宗派を興した宗祖(真言宗の弘法大師や浄土真宗の親鸞聖人など)の像です。

つまり、御影堂とは、宗祖の仏像を安置したお堂のこと。

特に、大きな宗派における「総本山」や「大本山」と呼ばれる大寺院クラスに多く見られます。

また、ご本尊を安置するお堂(一般的な寺院における本堂)と同等か、それ以上に重要視されるお堂です。

そのため、寺院の中で、御影堂が一番大きな建物である場合も少なくありません。


なお、「御影堂」は宗派や寺院によって読み方が変わります。

浄土宗でも知恩院では「みえいどう」、西山浄土宗の光明寺では「みえどう」と読みます。

一方、西本願寺や東本願寺などの浄土真宗では、「ごえいどう」と呼ぶのが普通です。


御影堂に似た建物として、開山堂というお堂もあります。

「開山」とは、そのお寺を最初に創建した人物のこと。

つまり、寺院の創始者の像を安置しているのが開山堂です。

例えば、ある宗祖の弟子が1つのお寺を創建した場合はその弟子が開山となります。従って、開山と宗祖は必ずしも一致しません。

東本願寺御影堂


以上の伽藍についての基礎知識をちょこっと頭に残しておくだけでも、それぞれの建物の目的が少しは理解できるようになります。

これまでただお堂の周りをぶらつくだけであった境内散策が、とても有意義なものとなりますよ。


以上、日本の仏教寺院について、「宗派」、「仏像」、そして今回の「伽藍」の3回に分けてご紹介しましたが、いかがでしたか。

寺院には特に関心がなかったという方も、興味が少しわいて「ちょっとどこかのお寺を訪れてみようか」という気持ちになっていただけたら、大変うれしく思います。